昨日、21日、北品川にある原美術館に行ってきました。
実はハヤシは、原美術館のフレンドシップ会員でして、年間1万円の会費を払っています。
これ、2013年からのことです。
きっかけは、2012年の3月頃のこと。
ちょうど、その頃、ハヤシの妹が職場の研修で2か月ばかり東京で生活しておりました。
彼女の住まいは会社からあてがわれたマンションだったので、金曜の夜によくうちに泊まりに来て、土日に一緒に美術館を回っていました(彼女は、私なんぞ比にならないくらいの美術好きです)。
その中のひとつが原美術館でした。
ここは、ポップアート専門の美術館なのですが、妹と行ったときは、20世紀の服飾の歴史の展示をやっていて、初期のココ・シャネルやイヴ・サンローランのデザインのドレスや、私が尊敬するコムデギャルソンの川久保玲、イッセイミヤケなどの、古いコレクションラインなども展示してあり、その美術館らしからぬ展示が非常に興味深かったのであります。
館内はお世辞にも広いとはいえないのですが、中庭に面してオープンなカフェがあり、軽食やアルコール、お茶にコーヒー、スウィーツを楽しむことができます。
しかも、他の美術館にありがちな「休憩メイン」のお味ではなく、出てくるものはどれもなかなかに本格的なお味。
妹と行ったときは、パスタとスパークリングワインを頼んだのですが、本当においしくいただきました。
アートはもちろん食、くつろぎの空間でも人を楽しませようという原美術館の姿勢に私はすっかり感激し、ちょっと応援することにしました。
で、一番お安くはあるけれど、年会費を払う立場になったのです。
とはいえ、なかなか行く時間も取れず、年会費のもとは全く取れていません。
そんななか、今やっている展示は、絶対に行きたいと思い、本日夕方からの打ち合わせの前に、私は原美術館に行きました。
本日の展示は「ポリフィーロの夢」という、とあるお話を元にした展示です。
ポリフィーロという男の子が、愛するポーリアという女の子を助けるために命がけの冒険をする…と
いう夢(これ、全部言ってしまうと面白くないのでこれくらいにしておきます)の物語の順番に、展示が用意されているというものでした。
館内に入る時からすでに物語は始まっていて、大きなオオカミの口を通って中に入っていきます。
そして、物語を簡単に説明する紙芝居仕立てのビデオや、パワーを増す甲冑を身につけたポリフィーロの像、自らポリフィーロになって敵と戦えるバーチャルな展示室、ポーリアのもとへ導いてくれたキューピットの部屋、等々を通って行くのです。
この展示は、二コラ・ビュフという東京在住のフランス人アーチストによるものですが、この方、「宇宙刑事ギャバン」が好きだったり、現代日本文化に影響を強く受けているんだそうです。
どおりで、ポリフィーロがつけていた甲冑に妙に特撮ヒーローの面影が漂っていたり、キューピットの部屋の装飾がゴスロリな雰囲気だったり、と、日本のポップカルチャー色がプンプンしていました。
遊園地みたいで子供も楽しいし(実際小さな子も来ていました)、ポップカルチャー好きもカップルも、一人で来た四十路女も楽しめる、非常に秀逸な展示でした。
個人的には、今まで見た展示の中でベスト3に入る良さ、でした。
ハヤシは、元々絵を見るのが好きで、わりに若いころから美術館には出入りしていました。
しかし、地元札幌は、市立の美術館と芸術の森という野外美術館があるくらいで、気が向いたときにふらっとアートを楽しむという環境にはなく、触れられる芸術にかなり限りがあったことは間違いありません。
一番美術館に通っていたのは、実は、修習生のころでした。
私が修習生だった頃は、修習開始直後の2か月間、埼玉県和光市にある司法研修所というところで座学の研修を受けることが義務付けられていました。
地方出身者は、隣接している「いずみ寮」というところに入っていたわけですが、とにかく、この生活が苦痛で苦痛でたまりませんでした。
研修所は和光駅からバスで10分ほど離れた場所にあり、しかも市街地との間には米軍の払下げの土地を、ほぼそのまま放置しただけのどでかい公園が横たわっており、ご飯を食べに行くにも、買物に行くにも不便する、まさに「陸の孤島」でした。
私は心の中で「現代のアウシュビッツ」と呼んでいました。
まずい寮の食事、研修所と寮の往復というウィークデーの生活に耐えられず、私は、ほぼ毎週末、東京に美術館通いしていました(そのため、勉強する時間がなく、成績はすこぶる悪かった)。
ビリヂストン美術館を観に行って、札幌にはない?私設美術館の良さを感じました。
上村松園の日本画に出会い、それまで全く興味がなかった日本画に魅かれるようになったのもこのころです。
損保ジャパンの東郷美術館でゴッホのひまわりを観て、その迫力に気圧されたこともありました(飾ってあるのは贋作という噂がありますが、あれが贋作なら贋作描いた人は、すごい腕前の持ち主です)。
確かに研修所の成績はとんでもないことになりましたが、この美術館通いができただけで、和光に来ていた甲斐があったのではないかと、思っています。
修習後は、仕事に追われたり、美術不毛の地の?愛知にいたり、などなど、なかなか絵画に触れることができない生活が続いてしまいましたが、原美術館と出会って、フレンドシップ会員になり、毎月展示のお知らせをもらうようになって、私の中の「アート魂」が、ほんの少し、くすぐられるようになりました。
なんというか、右脳で反応できるものを持つことは、心の余裕につながるのかな、なんて思います。
触れるものが、ただ美しいだけではない、ちょっとひねりが利いていたり、いびつだったりするものであれば、それを解釈するために一度立ち止まるので、余計に心の余裕が必要です。
そういうきっかけを与えてくれる原美術館の存在は、私にとって、とても大切なものです。
もう1つくらいは、自分のテリトリーといえる美術館が欲しいと、思いますけれど。
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