読書の秋です。
これ、最近の私にとっては、比喩ではありません。
読書家というよりは、活字好きかつ本屋好きのワタクシ、時間があれば本屋をウロウロしています。
お気に入りの本屋は、銀座コア6階のBook1st。
夜10時まで開いているのも嬉しいし、店内の雰囲気がとても落ち着いていて、心地よいのです。
これ見よがしなおしゃれ感とかヒーリング感を出すようなものは一切ないのに、じっくり本を探せる雰囲気を出してくれるのは、ディスプレイの妙なのでしょうか。
仕事で使う専門書などは丸の内の丸善か弁護士会館地下の書店で買いますが、個人的趣味でうろつく場合には、コアのBook1stが最高です。
それはさておき、ここ半年から1年くらい、「ぐーっと入り込んで読める本」に全く出会うことができませんでした。
林は、活字好きではありますが、文体に勢いがなかったり、日本語が不自然だったり、小難しかったりすると、たとえ大人気作家の本でも、大ベストセラーでも、読み続けることができません。
何か本が読みたいなあと思って、書店に行って、タイトルが目に付いた本を手に取り、ぺらっと最初のページをめくる。
その最初の数行にピンとこない本は、装幀に惹かれて買っても、最後まで読めずに挫折してしまいます(きれいな装幀の本を手に入れただけでも得だとは思いますが)。
今年に入って買った本で、これまで完読したものはほとんどなく、印象に残っているのは、島田裕巳さんの「浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか」(幻冬舎新書)くらい。
趣味で買った本も、仕事でも関わりが多い精神医学関係の本ばかり。
それとて、頭から読みふけるというのではなく、興味が湧いたところなどをぱらぱら断片的にめくるという読み方。
ところが、先週あたりから、かなり変わってきたのです。
本屋をうろついていると、「これは読みたい」「これは買いだ!!」という本に出会うようになりました。
手始めは、先週土曜日。仕事で田町の方に行っていました。
ちょっと時間があったので、駅ビル?の中に入っていた「虎ノ門書店」という小さな本屋さんをウロウロ(ここの雰囲気も好きです)。
そこで、いきなり、よしもとばななの文庫版「スウィート・ヒアアフター」(幻冬舎文庫)に遭遇。
ばななさんの作品は、「キッチン」から好きなものが多く、そういえば久し振りだと思いながら手にとって数行読んでみたところ、あいかわらずのばななワールドに引き込まれて、即決購入。
もともと遅読で、読む時間も電車の中とか外食中くらいしかないので、まだ読み終わっていないのですが、今日中には読み終わりそう。
翌日。
今度は職場近くの有隣堂で、松浦弥太郎の「日々の100」(集英社文庫)を購入。
松浦さんといえば、「暮しの手帖」とcowbooksのイメージが強くて、文筆家としての彼を、私はあまり知りませんでした。
この本は、まず装幀に惹かれて手にとって、中身を読んで「買うぞ!!」と決めました。
彼の持ち物(愛用品)の写真と、それにまつわる思い出やエピソード、自分の「こだわり」が綴られる、という構成なのですが、文章がとにかくいいのです。
出しゃばりすぎず、芯があり、無駄な表現が一切省かれていて、短い文字数の中に、伝えたいことがぎっしり詰まっている感じです。
文章自体に衝撃を受けたのは、中学生の時に向田邦子を読んで以来のことです。
この本は、タイプ的にはテーブルの上にポンと置いておいて食事や仕事をしながらぺらぺらめくるという感じですが、どこのページを開いても綴られている文章に引き込まれます。
良い本に巡り逢いました。
そう。
本との出会いは、まさに「巡り逢い」です。
運命的なものなのです。
何気なく本屋をぶらぶらしているときに、ふっと目に付いた本。
それが自分にとってかけがえのない一冊になる、そういうものだと思うのです。
そして、そういう運命的な出会いは、本屋でしかできない。
ハヤシはそう思うのです。
今、書籍はどんどん電子化が進んでいて、そのうち、本屋がなくなるんじゃないか、なんて言われています。
電子書籍のみでの発行しかしない、なんていう雑誌もいくつかあります。
近い未来に、本は全部デジタルになってしまうのだろうか?
日本のようにスペースがない国、高齢化して人口が減少し、本が売れなくなる未来しかない国では、こういう末路しかないのでしょうか?
もし、そんな世の中が自分が生きている時代にやってきたとしたら、私は、生きる楽しみの数十パーセントを確実に失うこととなり、そして、一切本を読まなくなるように思います。
だって、どういう風に本と出逢えば良いのか、わからなくなってしまいますから。
ネットで、オススメの星の数や、質感がわからない装幀なんかを見たって、ビビッとこないもの。
本はやっぱり、書店で手にとって、1ページ目をめくり、感動や衝撃とともにお持ち帰りすべきものだと、ばななさんと弥太郎さんの本を手に入れて、改めて思う初秋なのであります。
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