先週の火曜日のことです。
弁護士会の仕事で、家庭裁判所のとある会合に顔を出すことになりました(各地の弁護士会は、様々な公益活動をしていて、その一環)。
定刻の13時30分の5分くらい前に会場入りしたところ、私の席のところにやってきて、かしこまって名刺を手に待っている男性が1人。
数日前に電話をくれた職員の方かなと思いながら、私もリュック(注:私の仕事鞄はリュックサック)から名刺入れを出したところ、「お久しぶりです。札幌に戻ってこられたんですね。」と名刺を差し出されました。
それを見てびっくり。
大学生の時に付き合っていた元彼の名前が書いてあるではありませんか。
顔を見たら、マスクはしているけれど、確かに彼です。
私の方はかなりびっくりして「ああ、どうもお久しぶりです。」くらいのことしか言えませんでした。
実は、裁判所に行く道すがら、「そういえば彼今どこにいるのかな」と思っていたのでした。
というのも、彼は、私と一緒に司法試験の勉強をしていたものの、大学4年の時に、働きながら勉強を続けようと、裁判所の職員の試験を受けて合格。卒業と共に札幌の裁判所に入ったのでした。
当時のⅠ種試験に合格し、いわばエリートコースでした。
勤務開始後数ヶ月して職場の同僚に色目を使われてデレデレしたので、ちょっと関係にマンネリ感を感じていた私は、それをいいことに彼を切ってしまいました。
なので、その後の具体的な動向はそれほど把握していないのですが、自分が司法試験に合格した後は、たまーに情報が入ってきていました。
広い意味で同じ業界なので、裁判所の人事情報がそれなりに入るのです。
エリートコースのせいか、短いスパンで転勤があって昇進という感じで、札幌と東京を行ったり来たりしていたようでした(一時函館にいたこともあったようですが)。
とはいえ、ここ数年は、全然情報に接していなかったので、私ももう存在すら半分忘れかけていたのですが、先日裁判所に行くことになって、ふと「そういえば…」と思い出したところで、バッタリ出会ってしまったわけです。
何か会う前に念のようなものでも飛んできたのでしょうか。ちょっと不思議だったりします。
会ったのは17年ぶりでした。実は、司法修習中にバッタリ裁判所の近くで会ったので。
その時は学生時代のイメージとあまり変わらない感じでした。
で、今回彼を見た印象ですが、人物は同定できるものの、すっかり脂っ気が抜けて、小さいおじさんになっていました。
頭髪は頭頂部が若干薄くなっているくらいで、年齢的に見れば無事と呼べるような感じでした。
もともと背はそれほど高くなく、私(169センチ)よりやや低いくらいでした。
が、若さゆえにハリがあり、さらに、当時は「司法試験に受かってやるぜ」という若干のギラギラ感もあったので、それなりの大きさに見えていました。
今回会ったとき、「えー、こんなに小さかったっけ?」と思ったくらい、小さくなっていました。
たぶん年齢なりに枯れたのと、長年の公務員人生が彼を小さくしてしまったのかなあという気がしています。
私たちの世代が受けていた当時の司法試験というのは、大学の教養科目を修了している場合、3科目のマークシート試験→6科目の論文試験(7科目の時代もあった)→口述試験(面接みたいなもの)という流れでした。
で、私が大学生の当時、私の大学で、在学時にマークシートの試験に受かる人間というのは結構少数だったのですが、彼は実は4年生の時に一度マークシートの試験に受かったのですよね。
なので早期に最終合格が期待されていたのですが、やはり仕事と勉強の両立は厳しかったようで、結局受からずじまい。そのうち断念して、裁判所職員として生きていく道を選択したようなのです。
私は、弁護士になってから、4年ほど非常勤で家裁の仕事をしていたのですが、裁判所の職員の人って、やっぱりおとなしくてまじめなんですよね、皆さん。
いやもちろん、プライベートで色々楽しみを見つけている人はいるんだけど、うちの業界みたいに、破天荒な人はだーれもいません。さすが公務員。さすが裁判所。
長い間働いているうちに、彼も知らず知らずのうちに、そういう真面目でおとなしい「裁判所の職員」になってしまったということなのでしょう。
うちの母親は彼のことを気に入っていて、おそらく彼と結婚すると言ったら、反対はしなかったと思うのですが、結婚したらきっと面白くない人生になっていただろうなと思います…
なんか色々型にはめようとされちゃったんだろうなと(まあ、そうしたら離婚しただろうな)。
彼は、その会合で、お偉いさん席の端っこの方に座っていました。
一応ネームプレートもあったけれど、私は裁判所の職員が誰が出ているか全く興味がなかったので、放置されたらおそらく気づかずに終わったと思います。
別に名刺なんぞくれる必要がなかったのに。
彼だって、途中で一旦司法試験やめた私が弁護士になって、弁護士会の代表みたいな顔して裁判所に乗り込んできたの、正面から見たくなかっただろうに。
まあ、それを推して挨拶してくれたのかもと思うと、そこは、わざわざありがとうねと思うのでありました。
で、まさか邪な気持ちないよねと思いつつ、もらった名刺の裏を見てみました。
真っ白でした。
裁判所の名刺って、メールアドレスすら書いていないので、別に今後連絡が欲しいとかそういうことではなかったようで、ちょっとホッとしています。
本当に単なる挨拶だったのだなと。
いやこれで、連絡先とか書いてあったら、破って捨てましたけどね…気持ち悪くて。
今仕事では家庭裁判所に行くことはほぼありませんし、彼も現場に出る仕事ではないので、会うとしたら、また今回の弁護士会の仕事関連で裁判所の会合に出るときしかないですね。
今年は12月にもう1回開かれる予定です。
まあ、礼儀を欠かない程度に挨拶して終わりにしようと思います。