2013年4月21日日曜日

村上春樹の新作はどうなんだ。

色彩をもたない多崎つくるくんのお話ですが…この小説は面白いのでしょうか…

最近、何か夢中で一気に読み終えるという小説に久しくお会いしていません。
乾ルカの「てふてふ荘へようこそ」が最後、かな。

村上春樹の小説に関しては、ミーハーなことに「ノルウェイの森」が相当大好きで、「てふてふ」以外の小説で、最近最後まで完読できた長編小説も、実は「1Q84」のみだったことから、実はもう自分、春樹以外は受け入れられないんじゃないか、みたいな気持ちで、予約してまで手に入れました、多崎つくるくんのお話。

FB上の友人たちの中でも、この本を買った人は結構いて、賛否両論です。
一気に読み終えた。
新しい世界がまた開いた。
という絶賛系の意見の一方で、主人公のキャラが常に一緒、ストーリーの展開が理解に苦しむ…みたいな厳しい意見も。

で、私としては、「とにかく冒頭がつまらん。したがって、進まん」ということで、買って1週間たちますが、今まで最初の数十ページから進展できていない模様。

もちろん、読み進められないのは、極めて私個人の事情とか精神的な状況とかに負うところも大きいと思うのです。

まず、前提として、私はかなりの遅読で、相当に没頭しないと一気に読み進められないタイプ。
転職直後で慣れないことも多く、小説の世界になかなか没頭しにくい。
しかも、やはり転職をきっかけとして勉強しなくてはという気持ちになり、法律系の本を読むことが多い。

いや、しかし、しかしですよ。
本当にすごく面白い本なら、こういう没頭しにくい状況を凌駕して、一気にがーっと小説の世界に強引に連れて行ってくれるのです。
その力が、ないんだよね。今回のこのお話。

新作が出る数週間前に、村上春樹の短編集「めくらやなぎと眠る女」を買いました。これは、かなり古い短編を集めたもの(アメリカで出版されたものを日本でも同じ編成で出したというもののようです)。ヒマな時に一遍ずつちらちら見ていこうかなと思いまして。

短編と長編を比べるのはお門違いだと思うのですが、表題作の「めくらやなぎ~」もその次の「バースデー・ガール」も、表面に現れる透明感の裏に疾走感あふれるリズムが刻まれていて、本当にぐいぐい物語の中に引き込まれていきます。

しつこいようですが、新作にはそれがない。

「1Q84」もかつての村上ワールドには見られない必然性のなさがあって、それが私の周りでは比較的不評だったのですが、冒頭の「???」は物語の後半に読者を連れていく力が十分にあったように思うのです。

本当にしつこくて申し訳ないんだが、新作にはそれがない。

登場人物の紹介が結構長く続いてつまんない(そこがもしかすると後半につながるのかもしれないのだが)。なんというか、独特の疾走感が、ないのです。

もはやこれを読み終えるときが来るとしたら、出したお金がもったいないと思うときなんではないかと思うのです。
今読んでる銀行業務検定の信託実務のテキストのほうがおもしろいというのは、ゆゆしき問題なんじゃないんだろうか。

草野マサムネが何かの雑誌のインタビューで、かなり前に「自分で自分をパクるようになったらおしまいだ」みたいなことを言っていたことがあるのですが、たいていのクリエイターは、その呪縛から最終的には逃れられないのかもしれません。どんなにすごい人でも。

たとえば、コアな宮崎駿ファンからすると、ナウシカ以降の映画は、全て「カリオストロの城」の焼き直しだと言いますし(確かに、湯婆婆って、ドーラにそっくり…ってそういう話じゃないか)。

村上春樹の新作を読んだ時に、くしくも直前に読んだ「バースデー・ガール」を思い出してしまったのは、若いころの思い出を、酒を飲みながら向かいにいる相手に語るというのが男女が逆なだけで同じだったから、ということだけなんだろうか。

もしかすると、ノーベル賞に手が届くかと言われている村上春樹も、すでに自分で自分をパクる領域に入ってしまったんでしょうか。

ノルウェイの森は、日本で一番の青春小説だと思い、みどりちゃんって最高の女の子だぜと思っている私は、これから先、誰の小説を読んでいけばいいんだろうと、やや悲しい気持ちになったりしたのでした。

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