2017年4月17日月曜日

真央ちゃんのプログラムベスト3を考えてみた。

真央ちゃんが引退を表明して1週間が過ぎました。

私は、真央ちゃんは引退した方がいいんだろうなあ、そろそろ楽になってほしいなあと思っていたので、ニュースを聞いたとき(飲み会で、同席していた人がネットのニュースを見て教えてくれた)、ああ、ついにこの日が来たか、という気持ちでした。

良かったとか、悲しいとか、喪失感とか、そういうことではなく、誰にでも訪れる人生の節目が、ついに真央ちゃんにも訪れたんだなあ、自分で自分に引導渡したんだなあ、と思いました。
感慨深かった。

1週間の間、いろいろな姿を見せてくれた真央ちゃんの中で、ハヤシはどのプログラムが好きだったかな、と考えていました。

で、今回はそのベスト3を挙げていきたいと思います。

まず第3位は、「白鳥の湖」。ソチの前のシーズンのフリープログラムです。
このプログラムは、バンクーバー後に絶不調に陥った真央ちゃんが浮上してきたシーズンのもので、まさに円熟味を増した真央ちゃんの表現力がいかんなく発揮された名プログラムだったと思います。
ソチでこれやればいいのに!!と思ったくらい。
お気に入りは、白鳥が湖水の中で羽を羽ばたかせる振り付けと、ステップの途中で右手を顔の前でフリフリする振付です。
バレエジャンプも高くて美しくて、本当に氷上のバレエそのもの、でした。

第2位は、「チャルダッシュ」です。確か、シニアに上がった直後のシーズン、真央ちゃんが16歳の時のフリーだったと思います。この年からコーチを変えて、今ネイサンやワグナーを教えているアルトゥニアン先生についてもらっていました(シーズン途中で契約を切ったのですが。これも、本当はママの病気が理由だったのに、それを先生に言わなかったという泣けるエピソードがあるんだよねえ、うるうる)。

軽快なリズムで振り付けも小気味よく、16歳というまだまだ「元気印の天真爛漫」の真央ちゃんには、ぴったりのプログラムでした。

しかし、真央ちゃんには、なかなか大変なプログラムでした。

この年、真央ちゃんは「ステップからトリプルアクセルに入る」という最近よく聞く「難しいジャンプの入り方をして加点をもらう」というチャレンジをしていたのですが、そのためにトリプルアクセルが絶不調に陥ってしまいました。
しかも、このチャルダッシュ、確かハンガリー民謡かなにかで、リズムが独特。真央ちゃんは、このリズムに合わせるのにも苦労したようで、とにかく、調子が上がらなかった。

それが全日本でついに「ステップからのトリプルアクセル」を成功したのです(確かノーミスだった)。
終わった瞬間に、真央ちゃんの顔がゆがんだのです。その顔は「ああ、やっとできたよ」というものすごくほっとした泣き顔で、もう、ぐっときてしまったのでした。

そして、第1位は、なんといっても「仮面舞踏会」。バンクーバーシーズンのショートプログラムバージョンではなく、、その前のシーズンのフリースケーティングバージョン。
いや~、このプログラムの衝撃はすごかった。
まず、この曲を使ったプログラムを滑った人を少なくともハヤシは、この時まで聞いたことがありませんでした。

2回のトリプルアクセルを組み込んだうえに、複雑にして長い鬼のようなステップ。さらに、技と技の間も常に何かしているという4分間一度も休むところがないハードな内容でした。
その構成の激しさは、仮面舞踏会の曲調にぴったりで、今見ても「神プログラム」のひとつだな、と思わずにはいられないのです。
「真央ちゃんの神演技」といえば、間違いなくソチのラフマニノフでしょうが、「真央ちゃんを代表するプログラム」といえば、仮面舞踏会になると思うのです。

そして、衣装も素晴らしい。
あんな真っ黒でノーブルな衣装(そして無駄な装飾を極力排除している)、他に着こなせる人がいるでしょうか…これもまた「仮面舞踏会」にぴったり。
まさに、トータルアートのプログラムだったと思うのです。

名を成すフィギュアスケーターは数多くあれど、「この人といえばこのプログラム」というフィギュアスケーターは、相当有名な人でも実はそれほどいないと思うのです。
そういう意味で、真央ちゃんは「真央ちゃんといえばこれ」と思いださせるものが複数ある、本当に稀有なフィギュアスケーターだったのだなあと思います。

思えば、たぐいまれな才能を持つフィギュアスケーターほど金メダルには縁遠く、女子で言えば、ミッシェル・クワンしかり、スルツカヤしかり、伊藤みどりしかり、男子でもカナダのチャンなんてそちらの口かなあなどと思ったりするわけです。

負け惜しみとか言われそうだけど、オリンピックで金メダルをとれなかったこともまた、「偉大なるフィギュアスケーター」の勲章と言えるのかもしれないと思います。

金メダルがほしいとか言ってたけど、「勝つために」何かしてた人じゃないですからね、「自分が求める最高の演技」をしたいともがいていた人ですからね。勝つためのノウハウとかそういうこととは別次元で戦っていた人だから、時にその選択が(政治的なバランスで決まる採点基準の下では)得点に結びつかなかっただけ、そんな風に思えるのです。

浅田真央という偉大な選手を失い、女子のフィギュアは(ま、ルールのせいだけど)、何度も言っている通り、勝ち負けの分水嶺が分かりにくい、非常につまらないスポーツになってしまいました。

もっと浅田真央が正当に評価される世界であったのならば、女子のフィギュアは、男子フィギュアに引けをとらない技術的進歩の時代を迎えていたことでしょう。
女子フィギュアと男子フィギュアは全く別なスポーツと言っても過言ではありません。
女子のフィギュアは「正確かつ女子的美しさ」のみを追求するだけの競技になってしまいましたから…

ひとつの時代が終わったんだなあと思います。
伊藤みどりの後、果たして伊藤みどりの存在感を超える選手が出てくるのかと言われていました。
そこに浅田真央が出てきました。
浅田真央の存在感を超える選手は出てくるのでしょうか。
メドベデワ?
いや、彼女は強い子だけど、浅田真央の存在感はまだ超えられていない。
浅田真央は、そんなもんじゃなかったのだから。



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